学校の教室にあった掛け時計に良く似たものを居間の壁に設置した。この時計、電波を受信し手回しせずとも正確な時刻を指し示すとのこと。

さて、スイッチを入れたところ長針が振動しながら遠くに眺める観覧車の10倍ほどの速度でまわり始めた。0時から1時をすぎ、2時をあっという間に越した針はまだ回り続けた。すると今流れている「時」というものを私はいささか怪しむようになった。

もしや時の加速が起こっているのではないだろうか?拍をとって1秒1秒を数えてみるものの、その動作の間さえ圧縮されているように感じてしまう。

おもわず毛穴を突き破って成長するヒゲがないかと顎に手をあててみるが、手のひらにむかってとがりこんでくるものはなかった。
どうやら時は正常のようだ。安堵しつつも、私がいかにこのようなプラスチックと歯車でできたものに「時」という自らの感覚を委ねるあまり、それを計る力を忘却しているかを思い知った。

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